裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
(平成十六年五月二十八日法律第六十三号)最終改正:平成一九年一一月三〇日法律第一二四号
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 裁判員
第一節 総則(第八条―第十二条)
第二節 選任(第十三条―第四十条)
第三節 解任等(第四十一条―第四十八条)
第三章 裁判員の参加する裁判の手続
第一節 公判準備及び公判手続(第四十九条―第六十三条)
第二節 刑事訴訟法等の適用に関する特例等(第六十四条・第六十五条)
第四章 評議(第六十六条―第七十条)
第五章 区分審理決定がされた場合の審理及び裁判の特例等
第一節 審理及び裁判の特例
第一款 区分審理決定(第七十一条―第七十六条)
第二款 区分事件審判(第七十七条―第八十五条)
第三款 併合事件審判(第八十六条―第八十九条)
第二節 選任予定裁判員
第一款 選任予定裁判員の選定(第九十条―第九十二条)
第二款 選任予定裁判員の選定の取消し(第九十三条―第九十六条)
第三款 選任予定裁判員の裁判員等への選任(第九十七条)
第四款 雑則(第九十八条・第九十九条)
第六章 裁判員等の保護のための措置(第百条―第百二条)
第七章 雑則(第百三条―第� �五条)
第八章 罰則(第百六条―第百十三条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
(対象事件及び合議体の構成)
第二条 地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二 裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
2 前項の合議体の裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする。ただし、次項の決定があったときは、裁判官の員数は一人、裁判員の員数は四人とし、裁判官を裁判長とする。
3 第一項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官一人及び裁判員四人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。
4 裁判所は、前項の決定をするには、公判前整理手続において、検察官、被告人及び弁護人に異議のないことを確認しなければならない。
5 第三項の決定は、第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日までにしなければならない。
6 地方裁判所は、第三項の決定があったときは、裁判所法第二十六条第二項の規定にかかわらず、当該決定の時から第三項に規定する合議体が構成されるまでの間、一人の裁判官で事件を取り扱う。
7 裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、事件を第三項に規定する合議体で取り扱うことが適当でないと認めたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。
(対象事件からの除外)
第三条 地方裁判所は、前条第一項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で� ��り扱う決定をしなければならない。
2 前項の決定又は同項の請求を却下する決定は、合議体でしなければならない。ただし、当該前条第一項各号に掲げる事件の審判に関与している裁判官は、その決定に関与することはできない。
3 第一項の決定又は同項の請求を却下する決定をするには、最高裁判所規則で定めるところにより、あらかじめ、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
4 前条第一項の合議体が構成された後は、職権で第一項の決定をするには、あらかじめ、当該合議体の裁判長の意見を聴かなければならない。
5 刑事訴訟法第四十三条第三項及び第四項並びに第四十四条第一項の規定は、第一項の決定及び同項の請求を却下する決定について準用する。
6 第一項の決定又は同項の請求を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。
(弁論を併合する事件の取扱い)
第四条 裁判所は、対象事件以外の事件であって、その弁論を対象事件の弁論と併合することが適当と認められるものについては、決定で、これを第二条第一項の合議体で取り扱うことができる。
2 裁判所は、前項の決定をした場合には、刑事訴訟法の規定により、同項の決定に係る事件の弁論と対象事件の弁論とを併合しなければならない。
(罰条変更後の取扱い)
第五条 裁判所は、第二条第一項の合議体で取り扱っている事件の全部又は一部について刑事訴訟法第三百十二条の規定により罰条が撤回又は変更されたため対象事件に該当しなくなったときであっても、当該合議体で当該事件を取り扱うものとする。ただし、審理の状況その他の事情を考慮して適当と認めるときは、決定で、裁判所法第二十六条の定めるところにより、当該事件を一人の裁判官又は裁判官の合議体で取り扱うことができる。
(裁判官及び裁判員の権限)
第六条 第二条第一項の合議体で事件を取り扱う場合において、刑事訴訟法第三百三十三条の規定による刑の言渡しの判決、同法第三百三十四条の規定による刑の免除の判決若しくは同法第三百三十六条の規定による無罪の判決又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の規定による家庭裁判所への移送の決定に係る裁判所の判断(次項第一号及び第二号に掲げるものを除く。)のうち次に掲げるもの(以下「裁判員の関与する判断」という。)は、第二条第一項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)及び裁判員の合議による。
一 事実の認定
二 法令の適用
三 刑の量定
2 前項に規定する場合において、次に掲げる裁判所の判断は、構成裁判官の合議による。
一 法令の解釈に係る判断
二 訴訟手続に関する判断(少年法第五十五条の決定を除く。)
三 その他裁判員の関与する判断以外の判断
3 裁判員の関与する判断をするための審理は構成裁判官及び裁判員で行い、それ以外の審理は構成裁判官のみで行う。
第七条 第二条第三項の決定があった場合においては、構成裁判官の合議によるべき判断は、構成裁判官が行う。
第二章 裁判員
第一節 総則
(裁判員の職権行使の独立)
第八条 裁判員は、独立してその職権を行う。
(裁判員の義務)
第九条 裁判員は、法令に従い公平誠実にその職務を行わなければならない。
2 裁判員は、第七十条第一項に規定する評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
3 裁判員は、裁判の公正さに対する信頼を損なうおそれのある行為をしてはならない。
4 裁判員は、その品位を害するような行為をしてはならない。
(補充裁判員)
第十条 裁判所は、審判の期間その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、補充裁判員を置くことができる。ただし、補充裁判員の員数は、合議体を構成する裁判員の員数を超えることはできない。
2 補充裁判員は、裁判員の関与する判断をするための審理に立ち会い、第二条第一項の合議体を構成する裁判員の員数に不足が生じた場合に、あらかじめ定める順序に従い、これに代わって、裁判員に選任される。
3 補充裁判員は、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧することができる。
4 前条の規定は、補充裁判員について準用する。
(旅費、日当及び宿泊料)
第十一条 裁判員及び補充裁判員には、最高裁判所規則で定めるところにより、旅費、日当及び宿泊料を支給する。
(公務所等に対する照会)
第十二条 裁判所は、第二十六条第三項(第二十八条第二項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。)、第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により選定された裁判員候補者又は裁判員若しくは補充裁判員について、裁判員又は補充裁判員の選任又は解任の判断のため必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
2 地方裁判所は、裁判員候補者について、裁判所の前項の判断に資するため必要があると認めるときは、公務所に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
第二節 選任
(裁判員の選任資格)
第十三条 裁判員は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から、この節の定めるところにより、選任するものとする。
(欠格事由)
第十四条 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十八条の規定に該当する場合のほか、次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることができない。
一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定める義務教育を終了しない者。ただし、義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。
二 禁錮以上の刑に処せられた者
三 心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある者
(就職禁止事由)
第十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員の職務に就くことができない。
一 国会議員
二 国務大臣
三 次のいずれかに該当する国の行政機関の職員
イ 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員(ニに掲げる者を除く。)
ロ 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号)第七条第一項に規定する俸給表の適用を受ける職員であって、同表七号俸の俸給月額以上の俸給を受けるもの
ハ 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)別表第一及び別表第二の適用を受ける職員
ニ 防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号。以下「防衛省職員給与法」という。)第四条第一項の規定により一般職の職員の給与に関する法律別表第十一指定職俸給表の適用を受ける職員及び防衛省職員給与法第四条第二項の規定により一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第七条第一項の俸給表に定める額の俸給(同表七号俸の俸給月額以上のものに限る。)を受ける職員
四 裁判官及び裁判官であった者
五 検察官及び検察官であった者
六 弁護士(外国法事務弁護士を含む。以下この項において同じ。)及び弁護士であった者
七 弁理士
八 司法書士
九 公証人
十 司法警察職員としての職務を行う者
十一 裁判所の職員(非常勤の者を除く。)
十二 法務省の職員(非常勤の者を除く。)
十三 国家公安委員会委員及び都道府県公安委員会委員並びに警察職員(非常勤の者を除く。)
十四 判事、判事補、検事又は弁護士となる資格を有する者
十五 学校教育法に定める大学の学部、専攻科又は大学院の法律学の教授又は准教授
十六 司法修習生
十七 都道府県知事及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長
十八 自衛官
2 次のいずれかに該当する者も、前項と同様とする。
一 禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない者
二 逮捕又は勾留されている者
(辞退事由)
第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。
一 年齢七十年以上の者
二 地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)
三 学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)
四 過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者
五 過去三年以内に選任予定裁判員であった者
六 過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第三十四条第七項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。第二十六条第三項において同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)
七 過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者
八 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。
(事件に関連する不適格事由)
第十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、当該事件について裁判員となることができない。
一 被告人又は被害者
二 被告人又は被害者の親族又は親族であった者
三 被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
四 被告人又は被害者の同居人又は被用者
五 事件について告発又は請求をした者
六 事件について証人又は鑑定人になった者
七 事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人になった者
八 事件について検察官又は司法警察職員として職務を行った者
九 事件について検察審査員又は審査補助員として職務を行い、又は補充員として検察審査会議を傍聴した者
十 事件について刑事訴訟法第二百六十六条第二号の決定、略式命令、同法第三百九十八条から第四百条まで、第四百十二条若しくは第四百十三条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与した者。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。
(その他の不適格事由)
第十八条 前条のほか、裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた者は、当該事件について裁判員となることができない。
(準用)
第十九条 第十三条から前条までの規定(裁判員の選任資格、欠格事由、就職禁止事由、辞退事由、事件に関連する不適格事由及びその他の不適格事由)は、補充裁判員に準用する。
(裁判員候補者の員数の割当て及び通知)
第二十条 地方裁判所は、最高裁判所規則で定めるところにより、毎年九月一日までに、次年に必要な裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。
2 前項の裁判員候補者の員数は、最高裁判所規則で定めるところにより、地方裁判所が対象事件の取扱状況その他の事項を勘案して算定した数とする。
(裁判員候補者予定者名簿の調製)
第二十一条 市町村の選挙管理委員会は、前条第一項の通知を受けたときは、選挙人名簿に登録されている者の中から裁判員候補者の予定者として当該通知に係る員数の者(公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第二十七条第一項の規定により選挙人名簿に同法第十一条第一項若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第二十八条の規定により選挙権を有しなくなった旨の表示がなされている者を除く。)をくじで選定しなければならない。
2 市町村の選挙管理委員会は、前項の規定により選定した者について、選挙人名簿に記載(公職選挙法第十九条第三項の規定により磁気ディスクをもって調製する選挙人名簿にあっては、記録)をされている氏名、住所及び生年月日の記載(次項の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者予定者名簿にあっては、記録)をした裁判員候補者予定者名簿を調製しなければならない。
3 裁判員候補者予定者名簿は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。以下同じ。)をもって調製することができる。
(裁判員候補者予定者名簿の送付)
第二十二条 市町村の選挙管理委員会は、第二十条第一項の通知を受けた年の十月十五日までに裁判員候補者予定者名簿を当該通知をした地方裁判所に送付しなければならない。
(裁判員候補者名簿の調製)
第二十三条 地方裁判所は、前条の規定により裁判員候補者予定者名簿の送付を受けたときは、これに基づき、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判員候補者の氏名、住所及び生年月日の記載(次項の規定により磁気ディスクをもって調製する裁判員候補者名簿にあっては、記録。第二十五条及び第二十六条第三項において同じ。)をした裁判員候補者名簿を調製しなければならない。
2 裁判員候補者名簿は、磁気ディスクをもって調製することができる。